こぼれたビーズ
小さな厚紙の小箱
私の宝箱
久しぶりに開けるとビーズが零れ落ちた
幼かった娘がくれた
ビーズの指輪の糸が切れていた
何年かぶりに帯広へ行った
そこは私の中で特別な町だった
16歳の私がいた街
思い出も私とともに年を重ねるのかと思っていたけれど
いつの間にか糸は切れ
残ったのは繋がらない電話番号だけ
もうどこにも誰もいない
乾いた砂が零れるように
私から全てが零れていく
そして私も砂になる
零れて消えて見えなくなる
床に零れた色とりどりの小さなビーズ
娘の湿った小さな手が
私にはめてくれた指輪の欠片
大事に思っても
それは永遠にはなりえない
私自身が過ぎ去っていくものでしかないから
そして
それでいい
永遠に残るものなど無い方がいい
ゼロから形作られたものは
ゼロに戻るだけなのだから